「私は今まで何人かの親しい友人たちに、他人には知られたくない自分の欠点、弱点について話したり、手紙に書いたりしたことが何回かある。親しい友人は、私のことを洗いざらい知っている。しかしまだ親しい友人である。自分の弱点を語ってこわれた友情は一つもない。そんなもんである。こんなことを知ったら、きっとあいつはオレと付き合わなくなるにちがいない、と思っても、案外むこうはさらに親しみを感じたりする。こんなことを知ったら付き合ってくれないのではないか、と思いつつ友人と付き合ってることがある。それが現実に脅かされているということ。いつもビクビクしている人は現実を恐れている人。ところで次に考えられるのは、こちらの弱点を知って、私たちから去っていく人もたしかにいる。しかし実際の自分を知って去っていく人と、何で付き合わなければならないのであろう。自分を偽ってまで、ある人と付き合ってもらいたい、ということはどういうことであろうか。それは実際の自分を自分が軽蔑しているということである」

著 加藤泰三 自信より一部抜粋