「恥ずかしがりやの人は自分に対する最悪の批評家である、というのはジンバルドーの言葉である。人間の心が成長するには順序がある。まずやさしい理解者がいて、その次の段階で批判者がでてくるのは構わない。しかし、やさしい理解者がいないのに、いきなり厳しい批判者と接したら、その人の心は破壊されてしまう。恥ずかしがりやの人ばかりではなく、他人が自分をどう思っているかばかり気にして生きている人も同じである。本当のやさしさに接することなく、人生の大切な時期をすごしてしまったのである。そのうえ自分までが自分に批判的になる必要はない。自分は自分にやさしく、養育的な態度で接することである。ただ人間の心の成長というのは本当に難しいものだと思う。それは、心やさしい母親に育てられた人は、大人になってほっておいても自分にやさしくする傾向がある。しかし、恥ずかしがりやの人の例にみるように、子供の心を理解する能力のない母親に育てられると、その人は自分に批判的に接するようになる傾向がある。虚勢をはっている人なども同じである。心の底で自分に批判的になっているからこそ、他人に虚勢をはってしまうのである。ありのままの自分にもし他人が批判的であっても、自分はやさしくしようと決心し、それを実行できていれば、だいたい虚勢をはる必要がない。小さい頃愛情欲求を満たされることなくすごした人は、自分は自分の第一の理解者であろうと本気で決意することである。本気で自分にやさしくなろうとすることである。最終的には自分が自分の人生の責任をとらなければならない。他人の期待にかなおうとどんなに勤勉に頑張ってみても、その人達が自分の心の底の虚無を満たしてくれるわけではない」

著 加藤諦三 一部抜粋