「騙されて苦境に立たされた時に、そこに自分の過去のツケの部分がないかと反省しないと、また同じように騙される。例えば騙されて、ある高価なものを買ってしまった。欠陥住宅を騙されて買ったとか、土地の広さを騙されて買ったとか、当然知らなければならないその土地の欠陥を知らないで買ってしまったという場合。そうした土地を買っている人は、たいてい【これは掘り出し物だ】と思って買っている。不動産屋の【これはまだ市場に出てません、掘り出し物ですよ】という騙し文句である。騙されない人は、こういう時に【そんな都合のいい話が、この自分にあるはずがない】と思う。普通の人はあまりにも都合がいい話に疑問を持つ。騙されない人間は立場をわきまえている。立場をわきまえているということは、自分のしていることが世の中でどの程度のことか、自分の社会への貢献がどの程度のものか、それらを知っているということ。たとえ人々から賞賛を受けても、自分は一階で踊っているのか、三階で踊っているのかをわきまえている。自分がしていることも、他人がしていることもキチンと評価できているということ。一人で得意になっていないということ。騙されない人は、世の中で自分の位置が分かっている。それが分かっていない人は、社会に大変な貢献をしている人を無視したり、ものすごい実力のある人をバカにしたりする。それが立場をわきまえていない人である」

著 加藤諦三 たくましい人より一部抜粋