「自分の器を広げないで、周辺のことを整理する。これが心の整理学で大切。そして整理するために必要なことは【捨てる】ということでもある。燃え尽き症候群の人は、【あれもしなければ、これもしなければ】と欲張って、この整理ができない。【あれもしなければ、大変なことになる】とストレスを感じている。そしてこの整理ができないから、努力に努力を重ねても最後には燃え尽きる。【二兎を追う者は一兎をも得ず】という有名な格言がある。心の整理学とは、【自分はどちらの兎を追うか】ということを決めることである。捨てようとしても、決断できない自分がいる。大きな魚を捕ろうとしたが、小さな魚を捕ることにする。そして両方とも逃げられる。どちらかを捨てる。両方に好かれようとすると矛盾が出る。【あの人とは、うまくいかなくなっても良い】と覚悟をする。その【捨てる】覚悟ができなければ決断はできない。捨てられないから、無理に自分の能力を超えて器を大きくする。要するに能力オーバーになる。器を広げすぎれば自分はどの時間を生きるのかも分からなくなる。捨てられなければどんなに努力しても挫折が待っている。リンゴが木の上になっている。欲しい。でも荷物を背負っていて木に登れない。もしリンゴが欲しいなら、その荷物を下ろさなければならない。飛躍するときには捨てなければならない。魚が捕れた。でも瓶の中はいっぱい。もし魚を持って帰りたければ、瓶の中にあるものを捨てなければならない。捨てることができた人は、幸せの芽を選んだ人。今幸せな人も、かつて、何かを捨てたのだ。すべてを得ようとするからすべてを失う。人間関係も同じ。【この人達はもういい】と捨てることができれば、誠意を持って愛してくれる人が現れる。しかしどの人をも捨てられないでいると、最終的には誠意のある人は皆去ってしまう。対象無差別に愛を求める人は、最後には誰からも愛を得られない。捨てることができなければ心の整理はできない」

著 加藤諦三 心の整理学より一部抜粋