「自己主張の第一歩は、イエスとノーをはっきり言えるようになることである。他人の顔を見ずに賛成の時は賛成の、反対の時は反対の手をあげられるということ。自分の親にむかっても、賛成の時は賛成と、反対の時は反対と言えることが自己主張の第一歩である。日本の政界や財界をみていると、よくもまあと感心するほど老人が支配している。一つには老人のほうがまだ有能だということが考えられる。しかしもう一つ考えられることは、若手のほうが、老人に対して面と向かってはっきり退位を求めることができないから、ズルズルとこのような老人支配になってしまうのであろう。【面と向かっては言いずらい】というような話をよく聞く。しかし、一人前の人間と言われるためには、腹をすえて、かつての上役に対して面と向かって言いにくいことをはっきりと言えるようにならなければならない。しかし、このようのことも、企業に対する責任感や、社会に対する責任感があってはじめてできるものだと思う。自分が世話になった上役や親や恩師に対して、その人たちが最もいやがることを面と向かって言うということは、やはり大変なこと。しかしそれができないから、老害に社会がおかされていいということはない。日常的な小さなノーであろうと、非日常的な大きなノーであろうと、イエスとノーははっきりと言わなければ一人前ではない。自己主張とは、戦いである。しかし、自己主張なくして自信はない。自己主張が自信を生み出し、自信がまた自己主張をさせる」

著 加藤泰三 自信より一部抜粋