「キツネとウサギが競争している。キツネが山にこもってドングリを持ってきた。ウサギもドングリを持ってきた。そしたらウサギに対して【君はキツネと違うんだから、野原に行って野イチゴを持ってらっしゃい】と言わなければならない。ウサギに【ドングリを持ってこい】と言ってはダメ。そういう競争をさせてはいけない。ゆがんだ価値観というのは、山にこもってドングリを持って来ることの方が、野原に行って野イチゴを持ってくることよりも尊いということである。職業そのものに貴賤はないが、それぞれの人がしている仕事に貴賤はある。法律には引っかからないが詐欺まがいの仕事がある。人を騙すような仕事もある。そうした詐欺まがいの仕事と、社会に奉仕する仕事が同じだなどということはない。他人を極度に低賃金で使って奴隷にしておくことや、借金代わりの人質や農奴として他の人を奴隷にしておくことなどを反社会的としている。今でいうブラック企業である。お金持ちのブラック企業の経営者に【職業に貴賤なし】と言われたら、従業員はたまらない」

著 加藤諦三 自分の働き方に気づく心理学より一部抜粋