「アンデルセンの童話の中に【ヒナギク】という話がある。田舎の道端に一軒の別荘がある。庭には花が植えられている。そのそばの土手にはヒナギクが生えていた。【ヒナギクは、誰も草のなかにうもれている自分に目をとめるものがないことや、自分がまずしいつまらない花だということは、少しも気にしませんでした。それどころか、心から満足して、まっすぐにお日様のほうを見上げながら、空でさえずっているヒバリの歌に、うっとりと聞きほれていました】。自分に満足するということは、【自分が今ここにいること】に満足しているということ。今の自分のあり方を【これでいい】と思っている人。【今ここにいること】を楽しいと感じる。その体験を積み重ねていくことで、【実際の自分に満足する】ようになる。このヒナギクの心理状態が、自分が自分を受け入れている状態である。実際の自分に満足している状態である。このヒナギクは、ヒバリが歌えることを偉いと思っている。そして、自分が空を飛べないことや、歌えないことを悲しいと思っていない。ヒナギクは、ヒバリが上手に歌えるのを感心している。満足した人は、すべて良いことだと思っている。他の人を見て、【いいなー】と思える人は幸せな人である。そして、人生の苦しみを乗り越えている人である。【いいなー、あの人は】という羨望は、悪口とは違う。【いいなー、あの人は】と素直に言える人は、人生が困難に満ちていても生き抜ける。ヒナギクは、物事の受け止め方が素直である」

著 加藤諦三 やさしい人より一部抜粋