「不幸はやさしく、幸福は骨が折れる。安易な道を選べばまず不幸になる。キリストが【滅びに至る道は広く、天国に至る道は狭い】と言ったのと同じである。誰でも不幸にはなれる。しかし幸せになるのは重荷を背負わなければならない。ヤクルトの野村監督が【勝つのは大変だけど、負けるのは簡単だ】と言っていた。たしかにその通りである。それを言い換えれば【幸せになるのは大変だけど、不幸になるのは簡単である】ということだろう。ある人は幸せは厳しい仕事を通してやってくると言っている。その趣旨には賛成であるが、幸せというよりも私は【生きがい】とか【自信】と言ったほうがよいのではないかと思う。重荷から逃げると自分が生きた証がなくなってしまう。もちろんこの人も幸福は副産物だと述べている。幸福になることが第一の目的になった時には幸福にはなれないに違いない。重荷を背負って苦闘するから人は幸せになれる。重荷から逃げることはその場は楽である。その場は責任転嫁をして人を責めていれば心理的には楽である。しかしそのつけは大きい。ことに年をとってからの人生は辛くなる」
著 加藤諦三 人生の重荷を軽くするヒントより一部抜粋