「捨てるためには自分の人生の目的を持つことが大切。生きている以上、いろいろなことが毎日起きる。人生のさまざまなトラブルをさばくことができる人は、目的が分かっている。目的が分かっているから、何を捨てて何を捨てないかの選択ができる。会社はもうこれでいい。それが分かっていたら燃え尽きない。どうゆうように料理をするかが分かっていないと魚もさばけない。サンマでも何でも目的によってさばき方は違う。この【目的を明確にした生き方】をするからこそチャンスは来る。逆に、八方美人でどこに敵がいて、どこに味方がいるのかも分からない生き方、十字路でどっちに行こうかとふらふらしていつような気が散った生き方、このような生き方をしていれば、幸せになるチャンスは来ない。捨てるものをどんどん捨てる人にはしがらみがない。だから自分と周囲の関係が明確になる。目的がない人はなかなか欲を捨てられない。目的がない人はいろいろなガラクタをたくさん持って歩いている。そして一人で人生の荷物をたくさん背負っているつもりになっている。それが悩んでいる人の典型的なタイプである。過去の重荷まで含めて、ガラガラと引きずって歩いている。例えば雪のアルプスに登ることが目的だとする。たくさんの荷物を持っていく人はいない。余計なものは皆捨てて、必要最小限の荷物にして、登りだす。それは目的がハッキリとしているから。具体的な目的がない人は、どうしても【あれも欲しい、これも欲しい】になってしまう。これらの悩んでいる人は皆欲張りなのである。これらの人は、一つのものをしっかりとつかんでいないのに、もう一つのものをつかもうとしている。自分はすでにいっぱい持っている。それなのにもっと欲しがっている。もっと取ろうとしてイライラしている。イソップ物語に犬の話がある。自分が骨をくわえている。その姿が川の水に映った。その骨を欲しいと思って【ワン】と吠えたら、くわえた骨が落ちたという話。この犬はくわえた骨が好きではないのである。骨が好きなら吠えない。本当の幸せを知らない人が欲張りなのである。本当に好きなものがない人が欲張りなのである」
著 加藤諦三 心の整理学より一部抜粋