「できることをすればいい。必死になって頑張って仕事をする。そして、所期の目的を達成する。それは最高である。しかし、所期の目的を達成しようと頑張りすぎて、病気になってしまうということもある。それは最高を目指しながら結果は最悪ということになる。頑張りすぎて病気になったときには、なかなか治らない。快復するまでに時間がかかる。次善の策を英訳すると、おそらくセカンドベストであろう。つまり、次善の策はセカンドではあるが、あくまでも【ベスト】なのである。ヒンズー教の教えの中に、【彼は手に入れたものにはなんであれ満足する】という教えがある。【手に入れたもの】は必ずしも最高のものではないだろう。でもそれに満足する。それが生きる知恵であろう。つまりそれは、【次善の策で満足する】ということ。どのような家であれ、【自分が買った家は素晴らしい家】と満足するのが幸せになる秘訣である。【どうしよう】と心配することはない。【どうしよう】と心配してエネルギーを消耗するよりも、どのような家でも、それに満足する心を持った人間になろうと努力することが大切なのである。しょせん、人間はできることしかできない。だから、今日一日働いてできたことに満足するのである。できることをすればいい。そう思ったら落ち着いた。これだけのことをしなければならないと思うから、不安になる。これだけのことをしなければならないと思うから焦る。仕事の不安も、やるべきことをするだけで気持ちは落ち着いてくる。やれることだけのことをやれば気持ちは落ち着く。不安は毎日の手抜きの生活の垢から生まれる。不安な時は、自分のなすべきことを、まずやること。たとえ不安でも、活路はそこから生まれる」
著 加藤諦三 不安のしずめ方より一部抜粋