「会社にいてもずるく立ち回る人と、重荷を背負う人がいる。その会社にいる目的がない人はどうしてもずるくなる。ずるい人はそこにいるのが好きではない。ずるい、ずるいというが、彼等はいる場所がないからそこにいるだけなのである。重荷を背負う方も苦しいが、ずるいほうも苦しい。世の中には、公的と私的とをとわず、搾取する側と搾取される側に分かれる人間関係は多い。男と女の関係でも、親と子供の関係でも、友達同士の関係でも、仕事の関係でも。これが不幸の構造である。ずるく立ち回る人はやはりずるく立ち回る顔になっている。ずるく立ち回る人の雰囲気になっている。だからその人たちの周囲の人間関係もそうなっている。誠実な人はそのずるく立ち回る人たちの雰囲気が耐えられないから、その人たちと親しくはならない。つまりずるく立ち回る人たちの周りに張り巡らされている人間関係は信頼関係のない人間関係である。お互いに信じられない人々が集まっている人間関係である。ずるく立ち回る人は人生に目的がない。ずるく立ち回る人も、負担ばかり背負わされている人も、両方とも辛い。共倒れという言葉がある。自分にとって良くないことは相手にとっても良くない。ひどい扱いに耐えることは、耐えているものにも良くないが、ひどい扱いをしてる側にも良くない。彼らは絞っても、絞っても、苛めても、苛めても心は満たされない。言うことは立派だが、実際の行動はものすごくずるい。だからお互いに本当に親しい人はいない。いつもお互いに自分を守ることばかりを考えていて、誰も相手を信じていない。また誰からも信じられていない」
著 加藤諦三 人生の重荷を軽くするヒントより一部抜粋