「人に会う時、今までとちがって遅れないようにすること。陰うつな気分に傾きがちの時は、小さいものに目をそそぎなさいというヒルティーの言葉がある。陰うつな気分で生きている人は、小さいことをバカにしがちである。自分が小さいことをバカにしたからこそ、陰うつな気分で生活する破目になったということに、そういう人は気がつかずにいる。芝居がかった行動ばかりしたり、平気で人を欺いてきたからこそ、陰うつな気分になり、自分が望むところがわからなくなってきたのである。芝居がかった行動をするには、その人の固有の情緒は必要とはならない。しかし、小さなことをするのは、その人の固有の情緒が必要である。またそのようなことを続けるには、耐久力が必要でもある。小さいことをバカにする人には耐久力がない。人との待ち合わせ時間に、今までと違って遅れないようにする、などという小さなことを他人への愛情からおこなうことは、自分を変えるためには必要な第一歩なのである。今までの考え方が間違っていたのである。大きな事だけが自分を救うという考えでいたからこそ、陰うつな気分になり、何をして良いかわからなくなったのである。【陰うつな気分に傾きがちな時は、小さいものに目を注ぎなさい】と言ったヒルティはまた、【人のために大いに役立つ機会はそんなにあるものではないが、誰かにささやかな喜びを与えることなら、いつでもできるものだ】と言っている。ポーズをつくる人、奇をてらう人。そのような人は、小さなことをもつ意味を忘れている人である。だからこそ、自分が望むことをつかみ得ないでいるのである」

著 加藤諦三 自信より一部抜粋