「彼らは自分は何が好きだか分からないという。しかし好きなものは最初からない。コツコツとつないでいく。犬でも猫でも。毎日コツコツと世話をしてつないでいくことで好きになっていく、大切になっていく。彼らはそういうことが理解できない。最初から犬が好きではない。【本当の自分】はどこかにいるのではなく、創っていく。飼った犬が好きになっていく。ある人と付き合っていくうちに親しい人になっていく。親しい人とはそういうこと。【本当の自分】はもともとあるのではなく、次第に出来ていくもの。犬は最初から大切な犬ではない。その犬が固有の存在になるのは、コツコツと世話をして一緒に時間を過ごす中で、自分にとって固有の犬になっていく。そして固有な犬が出来てくる中で、そこに【本当の自分】が生じてくる。最高の犬は血統書つきの犬かもしれない。しかし自分にとってかけがえのない最善の犬は雑種かもしれない。彼らは最高と最善の違いが分からない」

著 加藤諦三 本当の自分はどこにいるより一部抜粋