「穏便に解決するということは危険である。人は人間関係のトラブルを避けようとする事で、自分の心の中で相手を巨大な物にしてしまう。相手を実際以上の人物に感じてしまう。それほど怖い人ではないのに、ものすごく怖い人間に感じてしまう。力がない人なのに力のある人に感じてしまう。そうなると相手のすることなすことすべてが怖くなる。そうするとトラブルの解決は相手に譲ることになってくる。人を見ないで穏便に解決するという姿勢は、実は恐ろしく危険なことである。時に【穏便に解決する】という姿勢がかえってトラブルをもの凄いものにする。反対に大騒動になってしまう。それは心の世界までも入ってくる。うつ病になったり、ノイローゼになったり。【穏便に】という事は、聞こえは良いが、トラブルの解決能力がないという事になる。【恐れている人から決して逃げてはならない】恐れている人から逃げる、逃げるから怖くなるという悪循環になる。いつも【穏便に解決する】という姿勢の人は、希望や目的のない人。目的があればそこに向かって歩いていく。トラブルはその途上の出来事であって、たくましい人は穏便には物事を解決しない。正しいだけでは生きていけない。強くてたくましい人であること、それが大切である」

著 加藤諦三 たくましい人より一部抜粋