「人を騙す人は幸せになれない。自分を信じられないからである。一方、騙される人は生産的な構えで生きていれば幸せになれる。自分を信じられるからである。今、騙されて悔しい人は、自分の幸せに気がつかなければならない。悔しいのは悔しい。騙されれば誰でも悔しい。しかしそれでも、やはり自分を信じられるということは幸せなことである。これを忘れてはならない。騙される人は悔しくて眠れぬ夜を過ごすことがあるかもしれないが、心の底から笑うときもある。だが、騙す人は心の底から笑うときがない。多くの場合、騙す方も騙される方も愛の体験が少ない人が多い。人を騙す人は、騙しても騙しても、満足しない。【もっと、もっと】人を騙そうとする。騙す人は非抑制型で小さいころに愛された体験がない。騙す人は集団をつくる。愛された経験のある人は、質の悪い人に近づかない。愛された人は嗅覚で質の悪い人を見分ける。小さいころ愛されなかった人は、善人面をした質の悪い人を見抜けない場合が多い。自分の生き方のどこかにあるゆがみが、動物としての本能に支障をきたしているのである。そもそも、身の危険があったときには逃げるというのが動物の本能である。鳥も魚も危険を察知してさっと敵から逃げる。あなたが騙されたとして、問題があったとすれば、それは、相手を短期間のつきあいで良い人と思ったのではなかったかということである。短期間のつきあいで良い人とおもうのはおかしなことである」
著 加藤諦三 どうしても許せない人から一部抜粋